●あらすじ
大切な人の死から、どこかなげやりに生きてる僕。高校生になった僕のクラスには、「発光病」で入院したままの少女がいた。
月の光を浴びると体が淡く光ることからそう呼ばれ、死期が近づくとその光は強くなるらしい。彼女の名前は、渡良瀬まみず。
余命わずかな彼女に、死ぬまでにしたいことがあると知り…
「それ、僕に手伝わせてくれないかな?」
「本当に?」
この約束から、止まっていた僕の時間がふたたび動きはじめた――。
「しっとりと心に染み渡る、美しい恋物語」「参りました。泣きました。生きていく――そのための力を読者にプレゼントしてくれる」と、なみいる選考委員も涙した、第23回電撃小説大賞≪大賞≫受賞作。
刊行にたずさわったみんなの心を揺さぶった、“今を生きる”すべての人に届けたい感動のラブストーリー。
●名(迷)言達
「夏の夜、天体観測、横には魅力的な異性、ロマンチックになるための要素、これだけ揃ってるんだよ?」by【まみず】
「無、か。変な墓だな」by【香山】
「ただの、知り合い、です」by【拓也】
●みどころ
発語する言葉の節々に不自然さは感じますが、
人と人との関係性の描き方にリアリティーがあります。
”出会ってない”
感覚・・・・・・とでも言うのでしょうか。
主人公とヒロイン以外の登場人物たちのまとう、なんとなくよそよそしい雰囲気が
「あ、リアルの人間関係ってこんな感じだよな」という謎の説得力があります。
●読んでみての感想
発光病という、架空の難病にかかり、余命宣告されたヒロインと、主人公の奇妙な依存関係を書いた作品です。
主人公は以前、近しい人を亡くしたトラウマがあり、解消したつもりでいても、無意識下でトラウマが燻っています。
ヒロインは、私の印象では”この世に「私」を残したい” という意思を通貫して持ち続けているように思えました。
終盤の佳境からエピローグに向かっていく部分の盛り上がりは必見だと思います。
ただ、読後に私が抱いた感想は
「短編作品にすれば、もっと面白くなったんじゃないだろうか」
でした。
世界観が醸し出す雰囲気にちょっと違和感を感じてしまって、物語にのめり込めなかった自分がいました。
なんでかなぁ と考えたのですが
キャラクター同士がかみ合っていない。
みどころで書いた「出会っていない」感じです。
「この人物は、物語の中でどういう役割を果たすのだろう」という必然性を見いだせなかったのがあります。
この作品のキャラクター達に「普通の人」がいません。
設定が現代の現実世界に酷似しているので、その中で「普通の人」じゃない、一癖も二癖もある人達。
私は人間は「条件が整えば、なんだってやる」と思っている口の生物なので、「普通の人」じゃないキャラクターたちは結構好きです。
ただ、登場させるなら、もっと物語の中で活躍させて欲しい、と思いました。
主人公のトラウマを説明するためのバックボーン以上の存在になれていなかったのが、ちょっと残念でした。
引用される中原中也の詩や、架空の小説家の生き様などが出てくるのですが、イマイチ生かし切れてなかった印象です。
難病をテーマにした作品なので、こういった小細工を使わないで、真っ向から挑んでほしかったな、と思いました。
作品に登場する発光病は 身体が淡く発光する病です。
美しく儚いヒロインがその不治の病にかかります。
闇夜に死を内在させた光が少女の身体に纏います。
想像するだけで絵になります。 タイトル通り 満点の夜空の明かりの下で淡く輝く彼女は神秘的でしょう。
美しい光景です。
しかし、美しい光景だからこそ、その美しい光景に逃げてはいけない気がします。
・・・・・・映画「君の名は。」を観たときと似たような感覚に陥りました。(10000字以上の、なっがいレビューをライブドアブログで書かせて頂きました。”映画「君の名は。」 あらすじ&考察”)
難病テーマの作品では映画「マイフレンド・フォーエバー」をオススメします。この作品は実際の病気を扱っています。
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