ひとりではない時間というものは、存外に甘美なものだった。
●あらすじ
悪の魔術師として人々に恐れられているザガン。
不器用で口の悪い彼は、今日も魔術の研究をしながら領内の賊をぶちのめしていた。
そんな彼が闇オークションで見つけたのは、絶世の美しさを持った白い奴隷エルフの少女・ネフィ。
彼女に一目惚れしたザガンは財産をはたいてネフィを購入するが、口下手な彼はネフィにどう接していいかわからない。
かくして、愛の伝え方がわからない魔術師と、主人を慕いながらも訴え方がわからない奴隷、不器用なふたりの共同生活が始まる。
●名(迷)言達
「生け贄が必要な魔術は趣味じゃない」by【ザガン(魔術師)】
「馬車が襲われていますが、人畜無害なのでしょうか」by【ネフィ(白髪のエルフ)】
「…………ご主人さま、いじわるです」by【ネフィ】
●みどころ
エルフのネフィが、よく観てくれます。
主人公のザガンは口べたです。
恥ずかしさを押し隠しながら発言するので
言い回しがキツいを通り越してヒドい事もありますが
ネフィは言葉尻だけでなく、ザガンの心持ちの奥底をよく観て、そして、感謝します。
……全肯定ヒロインってやつでしょうか。
戦闘シーンも少しあります。弱肉強食の世界なので、無慈悲です。
あと、表題にもついている”魔王”ですが、
これは魔術師が目指す最高位の称号を指しています。
●読んでみての感想
主人公が
素直になりたいんだけど、中々なれずに一人もんどり打っているようなツンデレです。
ツンデレと言うより、
思春期男子ですね。
ずーっと自分の城にこもって、過ごしてきたザガン。
オークションで”出品”された白髪エルフの美少女ネフィに一目惚れして、全財産投げ打って落札してしまいます。
一つ屋根(城)の下で暮らせば湧き沸き起こる衝動もあるけれど
「あの子との関係が崩れるのはイヤ!」
みたいな、甘酸っぱい感情をもつのも初体験です。好きな子にはそうなっちゃいますよね?
本気で惚れているんですね。
なんかお話をしようにも、ザガンには振れる話題がありません。
ネフィも無口です。
そんな二人が暮らしはじめて、心の距離が近づく切っ掛けは”気づき”でした。
ザガンは10年もの間、一人で城の中に籠もってました。
ネフィは故郷からも疎まれ、奴隷となってから「道具」と言われ続けて生きてきました。
二人は、お互いが欠落しているものを見つけます。
そして、その欠落したものを補おうとします。
ザガンもネフィも、虐げられてきた過去があります。
それ故に、相手の欠落したものを補おうとする気持ちが”優しさ”であることに気づきません。
そんなピュアな二人が過ごす
弱肉強食の剣と魔法のファンタジーです。ちょびっとだけ残酷な描写があります。
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