トラックに轢かれたのに異世界転生できないと言われたから、美少女と働くことにした。(日富美 信吾)レビュー


「要するに転生ってのは、生きてる間はどんなに駄目駄目だったとしても、奇跡の一発逆転が狙える素晴らしいものだってことなんだ」

●あらすじ

もしも己が望むような「異世界転生」ができるとしたら?

前世の記憶を保持しチート能力で無双する俺TUEEE勇者に!

勇者たちを圧倒的な力で打ちのめす魔王に!

可愛い女の子たちを侍らせるハーレム主人公!

そんなラノベ脳な高校生の志郎は、トラックに轢かれて死んでしまっていた。

死後の世界、目の前に現れた美少女フィリア。

……期待せずには入られないこの展開!! そして彼女は告げる

「あなたは転生できないの」

と。

転生するにはポイントが足りないらしい。

さらにハーレムや前世の記憶保持とかオプションを付けると、さらにポイントが必要だ

理想の異世界転生を果たすため、働いてポイントを稼げ! 梅川志郎の転生できないライフ!!


●名(迷)言達

「バイトよ!」by【フィリア(課長)】

「あなたにとっては『たった一言』かもしれないけど、スライムちゃんにとっては心震わせられる『とっておきの』だった―そういうことでしょう」by【フィスィ(異世界のちりめん問屋の楽隠居)】

「わからないの!」by【レン(スライム メインヒロイン)】


●みどころ

1頭身のスライムがメインヒロインなところです。

本の表紙の女性は、主人公の上司でヒロインとしてのスポットは当たってますが、

私の感性でいえば、間違いなく メインヒロインはスライムです。躊躇なく断定できます。

状況に応じてスライムから人型に変身できるかって?

そんな賢しい能力などありません。

1頭身スライムの直球ヒロイン無双がみどころです。


●読んでみての感想

ラノベ・WEB小説が大好きで、

特に異世界転生ものにドはまりしていた主人公が

案の定、命を落とし

よく異世界転生ものにありがちな、神様が運営する「転生するための窓口」的な場所に飛ばされ、

「来た! 異世界転生!」と期待しながら意気揚々と転生窓口の美女の話を聞いていると

「ご希望の転生条件を満たすには、ポイントが足りません。ポイントは前世で貴方がどれだけ頑張ったかで加算されます」と言われ、

前世の行いを悔やむ主人公に、受付の美女が

「ここで働いてもポイントが貯まりますよ?」

と促され、理想の異世界転生を果たすために主人公が働き出す。

というプロローグから始まります。

 

主人公シローの仕事は、訪れる死者の要望を聞き、死者の希望する異世界を提案すること。

名付けるなら

転生コンサルタント

みたいな職業に就きます。

 

一応、異世界転生の前段階という設定ですが、

ストーリーの展開の仕方は、

異世界転生職業系

で、

スローライフならぬファーストライフハーレムものです。

 

 

……ストーリーは正直言って、オーソドックスです。

異世界転生ものが一世風靡している昨今を皮肉るようなテーマの作品ではありますが、アンチテーゼには至ってません。

このアイロニカルな塩梅のテーマは、結構好みです。

ギャグセンスの部分では出落ちの一発ギャグを何度も再利用して深化させるあたりが、個人的にツボでした。

 

窓口には

人間だけでなく、異世界のモンスターから魔王からロボに至るまでひっきりなしに死者は訪れるので、激務です。

しかし、前世ではとくに何も考えずダラけて生きていたシローは

無事に気持ちよく転生していく人や、その途上の死者から感謝の言葉を受けたりなんやりで、喜びを覚え、

死してから生き甲斐を見いだします。

悔いのない転生ライフを設計して、提案する。

そんな日々を送るシローの傍らにはいつもスライムが……

 

傍らどころかいつもシローの頭の上にいます。

 

シローが落ち度の時はいつだって、全身を使ってプニプニと勇気づけてくれるスライムのレン。

彼女のひたむきさ加減は、作中の設定のちょっとした矛盾などを見つけてもどうでもイイ気分にさせてくれます

「時間の計算が適当だって? そんなこと言ったら、ウルトラマンだってマッハ5で飛べば、衝撃波で首がもげるよ」(空想科学読本より)

みたいな屁理屈を思い浮かべて、自分のつまらない心を封殺できる程の魅力がスライムのレンさんにはあります。

※この記事のジャンルカテゴリーに“プニプニ”を追加しようと思ったのですが、汎用性に欠けるので”もふもふ”で代用しました。

 

 

 

似たようなシチュエーションの作品に漫画「死役所」(ピクシブ百科事典)があります。

こちらは転生ではなく死者を冥土に送る窓口となっていて、ストーリーの主軸は、死役所を訪れる死者がどのような生き方をして死に至ったか、を描いています。

こちらもオススメですが、ストーリーはシリアスです。読み終えると心を抉られるようなとても嫌な気分になりますが、読み進めずにはいられなくなる作品です。

 

さらに、蛇足ですが、

この作品の扱うテーマから

異世界転生という行為について、

2分くらい物思いにふけりました。(以下、宗教にまつわる話が入ります)

この作品を読んで、随分昔に読んだ本のワンシーンを思い出しました。

うろ覚えですが ”チベット 死者の書”みたいなタイトルで、チベットの密教を多数の写真とレポートで紹介していた本だった記憶があります。

その中で、密教に入門した少年が、先輩の修行僧から教えを学ぶという物語形式で密教の思想を紹介するコーナーがありました。

”輪廻転生について”

ですね(他にもいろいろあったと記憶しているのですが、思い出せません)

 

密教(仏教)もそうですが、他の多くの宗教でも転生は良いことではない、と見なされています。

この世は不浄の世界で、神(またはそれに準ずるもの)の傍にこそ、真の安らぎがある。という思想が多いからです。

密教では生まれ変わるということは、再び徳を積みなおさなければ浄土へ行けない、という教えがあります(間違ってたらすいません)。

 

そんな思想を物語形式で紹介しているワンシーン

 

チベットでは遊牧を行っているので、密教の修行をしている少年は、修行の傍らで家畜の世話をしています(ある条件での肉食はOKだったはず。自信がありません)。

そのときに先輩の修行僧が言います。

「この牛はちょうど君のお母さんが亡くなったころに生まれた。もし、この牛が君のお母さんの生まれ変わりだったら? と想像してごらん。私たちはこの家畜たちから命をもらって生きているんだ。この牛が自分のお母さんだと気づかないまま、殺して、食べているんだ」

それを聞いた少年は無性に悲しみがこみ上げてきて、泣き出してしまいます。それでも先輩の修行僧は話し続けます。

「悲しいかい? 生まれ変わるというのはこういうことだよ。本当に悲しいと思ったなら君はしっかりと修行するんだ。修行して僧になった君が多くの人を浄土へ送れるように。そして徳を積み、君が誰から見ても決して転生することはない、と安心させてあげるんだ。君が死ぬときは、君を愛した人や、深い絆で結ばれた人達に、今の君のような気持ちを持たせてはいけないよ」 

そして、少年は修行に励みます。

 

うろ覚えですが、要約するとこんな感じでした。

異世界転生というのは、この世の未練を払拭する過程だと私は思いました。

この世の未練がなくなったとき、人は戻れえぬ旅路へ向かうことができるのでしょう……うん。

そして黄泉路の先でまた無双して…… 神様的な人に愛想をつかされ、

「もういい、もう一辺人生やりなおせ」

などと言われ生まれ変わって、 転生して また無双する

この繰り返し……

……これ地獄でしょう。

などと夢想してました。 2分くらい。

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