なんか……俺の目線、低すぎじゃないか?
●あらすじ
入社前に就職先が倒産し、家族ともうまくいかずに家出した渚は、辿り着いた神社で出会った迷い猫チャーと入れ替わってしまう。
状況が把握しきれないままチャー(中身は渚)を探しにきた男に拾われる渚(中身はチャー)だが…?
●名(迷)言達
「神社でチャーと一晩過ごしたら、僕でも猫になれるかな」by【上小路(猫に見下されてるけど、ネコカフェの店長)】
「どうかこの子を都合のいいときにだけ可愛がるペットではなく、家族の一員にしてください」by【上小路(猫に見下されてるけど、ネコカフェの店長)】
「昼間はできない。だけど、夜は働けるだろう?」by【渚(人間バージョン)】
「つまり、君は僕に嫌われることが怖いんだな?」by【上小路(猫に見下されてるけど、ネコカフェの店長)】
●みどころ
見た目は猫、頭脳は人間の猫ホストが、猫じゃらしや猫タワーで遊ぶところと。
見た目は人間、頭脳は猫の家出青年の食い意地。
心優しい、上小路店長のニュートラルに過剰な猫愛。
クスクス笑えます。癒やされます。
●読んでみての感想
親や祖父母の期待に添うよう
習い事や勉強に打ち込み、大学を卒業し、就活にも成功した青年が
入社前に会社が倒産、というやるかたない挫折を味わい
ちょっと遅い反抗期が訪れる話です。
努力に明け暮れていた日々が無駄になったと思い込み
そして同居する祖父母と両親の態度が著しく変わっていくことに耐えきれなくなった青年、渚は
身一つで家出します。
で、神社で一緒に夜を明かした猫と心が入れ替わるようになります(昼間の12時間だけ)。
上小路という猫の飼い主は心優しくおおらかで、あと、入れ替わりを早い段階で気づいてくれたため、
渚は上小路の家で居候をし、昼間は猫として、彼が経営する猫カフェの人気ナンバー1キャットとして、勤めます。
渚は猫カフェのゆっくりとながれる時間や、訪れる客、上小路の穏やかな仕事ぶりをみて、
自分を見つめ直します。
自分の親は、自分に何を求めていたのか
自分は何がやりたいのか
自分は誰に感謝しているのか。尊敬しているのか。
遅い反抗期を迎えた渚が、少しずつ時間をかけながら、
自分の心持ちの変化に気付いていく
物語です。
本文は202ページで、短めです
渚の心持ちの変化は如実に描かれていますが、
起承転結のストーリーがあるわけではありません。
奇妙な二人と一匹の同居生活の日常の一部を切り取ったような物語です。
あと
本に挟んであった猫のしおりが可愛いかったです。
気になったところは
細かいところですが
この作品で渚が勤める、警備員という職業についてです。
渚はバイトを探して二日後に施設警備の職にありつけて、翌日から早速出勤するのですが。
警備員は日本の法律で、勤務前に最低30時間の講習を受けなければなりません。
”猫と人間が半日だけ心が入れ替わる”という唯一の非現実的な要素を映えさせるためには
物語の世界設定をよりノンフィクションに近づけることが重要だと私は思ってます。
取材をしなくても、ネット検索で簡単に調べられる仕事の概要はなるべく抑えた方がいいのではないかなと思います。
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