追伸 ソラゴトに微笑んだ君へ(田辺 屋敷)レビュー


●あらすじ

二学期初日。空虚な日々を送っていた俺、篠山マサキは混乱した。

慣れた様子で教室へ突然現れたのは、俺の記憶にだけ存在しない少女。

しかも、優等生と評判のお前ときたら、猫被ってるわ、仮面恋人を演じるハメになるわで、もう散々だった。
だけどお前は、俺にお手製の弁当を作ってくれた。一緒に登下校をしてくれた。

誰にも言えない妙な関係だけど、そんな毎日を何よりも楽しんでる俺がいた。でも、気づいたんだ。出会うはずのないお前との時間は、結局絵空事に過ぎない、と。

だから俺は──風間ハルカを消すことにした。
第29回ファンタジア大賞〈金賞+審査員特別賞〉受賞作。


●名(迷)言達

「いま見たことは誰にも言うんじゃないわよ!」by【ハルカ】

「補習まで受けたその頭を言ってんのよ。おわかり?」by【ハルカ】

「とりあえず俺の話を聞いてくれ。頼む」by【マサキ】


●みどころ

主人公が

とある行為によってもたらされる、奇妙な変化を発見し

それを解明していくことで物語が進行します。

王道の青春ラブストーリーです。

王道にハズレはありません!!


●読んでみての感想

レビューを書くとき、普段は他の方達の感想を読んで書くことはしないのですが
今回はどのように書いたらいいのか悩んでしまった部分があったので、読書メーターさんのページにの投稿された感想を読ませて頂きました。

それを読ませて頂いた上で、一通り考えてみたのですけれど

 

そこで達した一つの結論は(これから先、考え方が変わるかもしれません)

 

「絶賛しているわけではないけれど、感想会は是非ともしたい作品です。

・・・・・・なんて言うのでしょうか

「感動を分かち合うことは出来ないけれど、議論を交わしたいと思える魅力はある」

作品。

楽しめたかどうかでいうと私は楽しめました。 特に終盤の風呂敷(伏線)の畳み方はとても良かったと思います。

 

仕掛け(SF要素)がシンプルで設定破綻することなく、効果的に活用できていたと思います。

それ故に、登場人物のキャラクター設定のツメの甘さが浮き彫りになった気がします。

登場人物に関して、率直な感想でいうと

”台詞を言わされ、思考を何者かに誘導されている感じ”

”キャラクターが無理矢理シチュエーションの中に投げ出されている感じ”

まとめると

”行為に必然性を感じない”

もっと短絡的にすると

”行動が不自然”

です。

 

顕著なのが序盤の部分で

物語を進行させるために登場人物の行動の可能性を狭めているように思えました。

序盤さえ読み進められれば、結末は楽しめると思います。

 

 

以下、

違和感を覚えた箇所の概要と考察を書いていきます。 (序盤部分のネタバレです)

 

《主人公の交友関係と人格について》

・概要 交友関係編

物語の最初に、主人公マサキが高校1年から野球部に所属していて、高校2年の夏休みが終わる前には退部していたことがわかります。

夏休み明けのある日のHRで、学校で球技大会が行われることとなり、各生徒が出場する種目を決める話し合いが行われます。

マサキは話し合いの初めのあたりから居眠りしてしまいます。 起きたときは、HRは終わっていて教室には誰もいません。

黒板に書かれた話し合いの内容から、自分の出場種目がソフトボールになったことがわかります。

 

・考察

クラスの皆は(少なくとも近しい友人は)、理由はわからないまでもマサキが野球部を辞めたことを知っています。

そして、辞めるまでは楽しそうに彼が野球をしていて、今は無気力になっていることは野球に関することであるのはうすうす感づいているはずです。

少なくとも一緒に弁当食べたりしている井上君は確実に知っていると思います

球技大会の出場者選びで、居眠りしていたとはいえ勝手にマサキにソフトボールを担当させるのでしょうか? もしかしたら井上君を初め、彼の近しい友人達は「ちょ、待てよ」と物申したてかもしれません。でも渦中のマサキが居眠りから起こされてないことから鑑みても、それほど波風立たずに決まったのでしょう。

で、HRが終わったら彼を放置して解散

どんだけ友達いないんだよ。井上君、友達頑張れよ!

一人取り残されているマサキを起こすのは、球技大会のまとめ役になった、ヒロインのハルカさんです。

 

・概要 人格編

ソフトボールがイヤなのでマサキはハルカに相談しに行きます。

球技大会のまとめ役になったハルカは、別の教室で球技大会出場者の名簿をつくっていました。

このときマサキはハルカの性悪な一面を目撃します(口汚い愚痴をぼやく程度ですが)。マサキがハルカに見つかります。

ハルカに「私の本性を誰にもバラすな」と脅迫されます。

いろいろやりとりがありますが、口止め料としてアイス一個をマサキに奢ることで示談が成立します。

マサキ「で、お前はいつ帰れるんだよ?」

ハルカ「この用紙に出場者全部の名前を記入し終えたら」

マサキ「じゃあさっさと終わらせろよ、待っててやるから。言っとくけど、手伝わないからな

 

・考察

・・・・・手伝わないけど、待っててやるからと。

猫を被るためとはいえ、皆が面倒だと思っている”球技大会のまとめ役”に立候補し、

猫を被るためとはいえ、面倒事を引き受けて、その面倒な作業をしている最中に

話し合い中に居眠りしていた人間が現れ、面倒な作業を中断させただけでなく、ハルカの弱みを握ると

「手伝わないけど、待っててやるから」

と言い放つ。

高圧的なハルカに、売り言葉に買い言葉のような心境で高圧的な態度で返してしまい、

「ああ・・・・・・ちょっと悪いことしたかな」

などと自分の行いを振り返る描写はありません。

読者(私)からすれば主人公の性格は外道ですが、

この客観性と洞察力に欠けた性格は、多分伏線です

でも、すいません。この伏線は意図的に書かれたのか、偶発的なものなのか判断できません。

それは、以下のエピソードがあったからです。

 

《主人公の不自然な思考回路について》

マサキが祖母宛に手紙を送りました。

祖母からの返事は来ず、代わりに

”高尾アキ”という方から「宛先を間違えていませんか?」

と、丁寧にかかれた手紙を受け取ります。

差出人の住所を確認すると、自分が知っている祖母の住所と一致し「?」ってなります。

 

そして「”高尾アキって誰だ?」 と思ったマサキは

 

家にいた母に

・改めて、祖母の住所を聞く → やはり一致。

・祖母が誰かと一緒に住んでいないか聞く → 一人暮らしとの返答。

 

さらに

 

祖母に電話して

・自分が送った手紙は届いているか? → 届いていない。

・一人暮らしか聞く → 一人暮らしとの返答。

 

「高尾アキ」が誰かということを知るために行動したマサキはなぜか

”高尾アキ”と言う名前を知っているか? を聞かない。

 

そして”高尾アキ”の正体を調べるためにマサキが出した結論

”高尾アキ”と交流関係を築くこと

その方法が

もう一度祖母の住所にを手紙を送ること

で、手紙の内容に

連絡を取り合いたい旨と一緒に、自分のメールアドレスや個人情報を記載

・・・・・・この時点で仕掛け(SF要素)に気づいていないマサキからすれば、

祖母宅の郵便受けから、高尾アキさんが手紙を抜き取ることが前提。

になっているのに、一切危機感を覚えていないのが不自然でした。

設定が2016年で、一応地球の日本で、情報教育だって成績が悪いなりにもプライベート情報の危機管理は教育されているはずの人間が取る行動とは思えません。

 

そして、この不自然な違和感から

祖母か母親に”高尾アキ”の名前を伝えると、謎が解ける」

という結論が簡単に想像できました。

なので

その他に散りばめられている

マサキの客観性と洞察力に欠けた性格を描いているシーンは、意図されているのか、されていないのか判断できませんでした。

ミステリー部分の保持のさせ方が、雑すぎるからです。

終盤は綺麗に纏まっていくので、本当に勿体ないと思いました。

”台詞を言わされ、思考を何者か誘導されている感じ”

”キャラクターが無理矢理シチュエーションの中に投げ出されている感じ”

この二つを如何に読者に思わせないようにするかが、“謎”の保持に大事なのではないかな、と思いました。

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