アンリミテッド・レベル 1 (鏑木 カヅキ)レビュー


●あらすじ

日下部虎次は高校二年生。修学旅行の沖縄へ飛行機に乗って向かう途中、

彼が乗っていた飛行機が突然墜落してしまう。

墜落した飛行機の機内で目を覚ますと、飛行機の折れた翼が自分の上に崩れ落ちてきた。

せっかく生き延びたのに、このままだと潰されて死んでしまう。

――かに思えた。

日下部は再び墜落した機内で目を覚ます飛行機の翼はすでに崩れ落ちていた。

非現実的な状況に混乱しながらも再び外に出るが、今度は異形の存在、魔物に殺されてしまう
またも機内で目を覚ました。

そしてここが異世界であり、自分に異能が目覚めたことを理解した。

死して生き返る能力、リスポーン。

日下部は助けを求めるため、人里を探す。
危険な目にあいながらも、村を見つけた日下部は

飛行機で隣の席だった遠坂莉依と、もう一人の少女が魔物に追われているところに遭遇する。

戦う力はない、だが死なない能力はある。時間稼ぎならばできるはずだ。

何度死んでも生き返る、リスポーン能力を駆使し、死の恐怖と戦いながらも逆境に立ち向かう!


●名(迷)言達

「テレッテッテー!」by【レベルが上がったときの音】
「ご名答。満点だ」by【リーシュ(ステータスがオーメンのダミアンみたいな子)】

「目立たないどころか友達もいなかったけど、それはさすがに言わない。微妙な空気になることは目に見えているからな」 by【日下部の語り】


●みどころ

主人公、日下部の一人称で物語が展開します。
高校生の主人公が未成熟な精神を持っていて、なんとなく高校生っぽい所がリアルです。

主人公が持っている特殊能力の中で「力量を数値化して閲覧できる(自分との優劣を見極められる)」能力が、

主人公の

「生き物は皆、自分が可愛い」

という、作品の奥底に隠されている、彼の真理を理解するのに一役買っています。

アクションシーン多めです。


●読んでみての感想

短くまとまめるなら

”ストーリーよりも戦闘に重きを置いたゲームの世界観”

をベースにした小説です(ドラクエ的な)。

キャラクターの性格も歌舞伎のドーランで色分けされているように、わかりやすいです。

(※歌舞伎では顔につけるドーランの色で登場人物の役どころがわかるようになってます、 白:良い人。一番白い人が主役。 :悪い人。悪役。 青白い:腹黒い人。たいてい黒幕。みたいな)

 

 

飛行機事故にあって異世界転移した主人公日下部は

命を落としても特定の場所から復活できる能力

相手の名前と力量と特殊能力を数値化して、ゲームのステータス画面のように閲覧出来る能力 etc・・・

を手に入れます。

 

最初はいろいろあったので、混乱して、ゴブリンやその他モンスターの襲撃を受けて何度も命を落とします

慣れてくると大した敵ではないことがわかり、

倒したり痛めつけたりすると、ステータスに”経験値”が加算されレベルが上がり自分の能力が上昇するという

筋トレの数十倍も効率の良い鍛え方を見つけてからは、(仲間が出来たこともあって)積極的にモンスターをバサバサと爽快に倒していく場面があります。

何が凄いのかって、

”憐れみがない”んですよね。この高校生。

初めこそ弱かったので、強敵に対してものすごい緊張感を持って対峙し、

相手にダメージを与えたときに手に残るイヤな感触などに精神的に「ウッ」と来てるシーンがあるのですけど

仲間が出来て自分もそこそこ強くなってくると、そんな感情はすっかり頓馬になっているみたいです。

「ゴブリンなんて一発で倒せるし」みたいな事を考えてます。

そしてステータス画面をみて、自分より強いゴブリンが出てくると

「ちょっと気を引き締めよう」

みたいになるんですね。

そして、物語の終盤で(以下、山場部分のネタバレです)

 

 

 

 

 

 

主人公が世話になった村人達が目の前でゴブリンに変えられると

「戦えるわけないだろ!!」

と苦悩します。

 

「スーパーでパッケージに入ったお肉や、お魚なら食べれるけど・・・・・・」

みたいな考え方を持つ主人公です。なんかリアルです。

 

主人公はゴブリンの命を、”経験値”という糧として、得ていることの重さを知ります。

いえ、正直知ったのかどうかは定かではありません。”村人総ゴブリン化”してからはゴブリンに遭遇していないので

主人公の心境が変化したのかはわかりません。

そもそも村人のゴブリン化は人為的に行われたので、 野生に生きる天然のゴブリンとは思い入れが違います。

でも読んでいて思います。

きっと主人公は経験値を稼ぐために再び野生のゴブリンをバサバサと倒すのだろう、

確固たる根拠はありませんが、作品内での一連の主人公の行動を見ていて、そう思いました。

主人公が”力量を数値化できる能力”を持っていることで、

敵を経験値としか見ていないというのが、わかったからです。

旅の障害になるため、経験値の稼ぎがてらゴブリンを襲う。

そこには特に”憐憫(れんびん)””罪悪感”もありません。

”恨み”もありません

自分だけは復活できることがわかってしまったから。

異世界に飛ばされた直後に魔物に襲われた恨みなどは残っていないようです。

 

純粋に

経験値を稼ぐために、ゴブリンを襲う。

 

そして

ゴブリン化した村人達は襲えない。

 

きっと、ステータスが自分や仲間より格上に出会ったら

理由がない以上は戦わないでしょう(作中の戦闘シーンには全てやらざる得ない理由があります)

 

主人公にとっては

”命は平等ではない”ということが如実に描かれている作品です。

その感情に主人公が気づいていない所も、それはそれで逆にリアリティーを感じます。

 

好みか否かで言えば、私は好みではありません。

 

主人公の性格や物語の構成もありますが、もう一つあります。

読点(。)の使い方が、ちょっと特殊でした。

作中の一段落分の文章を引用します。

”痛い痛い苦しい死ぬ死んでしまう死にたくない苦しい助けて誰か、助けて喉が渇いた何か飲みたい水が欲しい

61文字、行数にして1行半です。読点の数12

これは特に読点の多かった段落を抜粋していますが、短い単語で読点を打つシーンが多くて、読みにくい部分が結構ありました。

私の勝手な読み方ですけど

読点(。):深呼吸

句点(、):息継ぎ

するように読んでいます。・・・・・・わかりにくいですね。

読点:打った後に相手(または自分)のリアクションを待つ。相手のリアクション(または自信の心境の変化)を受けて、次の言葉を言う。

句点:相手(または自分)のリアクションを待たない。言い切る。

・・・・・・はい。例文にさせて頂きます。

 

明日。学校で会いましょう。 →”明日”と言った後に、相手が振り向いたり、うなずくなどのレスポンスを確認してから”学校で会いましょう”と言う。

※伝えたい対象が二人いた場合(Aさん、Bさん) ”明日。”ではAさん。”学校で会いましょう”はBさんに向けて言っている場合もある。

 

明日、学校で会いましょう。 →全て言い切った後に相手の反応を伺う。途中で伝えたい対象が切り替わることがない。

 

・・・・・・うまく伝わったでしょうか(リアクション待ち・・・)。

 

わたしは、そんなニュアンスで(これも便利な言葉ですね)読点について解釈しています。

なので句読点の位置で、

段落内にある感情の優先度を読み解く作業

をしています。で、その手段として

読点(。):深呼吸

句点(、):息継ぎ

をすると、段落で区切った文章中の優先度(とか臨場感)を効率良く見極められることを発見しました。

そんな感じで読書を楽しんでます。

 

上掲の方法で読んだとき、

痛い痛い苦しい死ぬ死んでしまう死にたくない苦しい助けて誰か、助けて喉が渇いた何か飲みたい水が欲しい

この段落で、たくさん深呼吸しました 部屋の空気がホコリっぽかったです。

作中の窮地に立たされている主人公とは裏腹に、凄く落ち着いてしまいました。

読点を打つ度に、自分が連想してしまったネガティブなイメージを反芻して(自分が発したアクションのリアクション)考えている事がころころ切り替わって行くんですけど。

なんというか

読点の度に毎回リスタートしている感じです。加速していかない感じです。

 

句読点を駆使して、キャラクターの状態(精神、肉体共に)を描いて欲しいと強く思いました。

痛い痛い、苦しい死ぬ死んでしまう、死にたくない、苦しい助けて、誰か、助けて喉が渇いた何か飲みたい、水が欲しい

痛い、痛い、苦しい、死ぬ死んでしまう死にたくない苦しい、助けて誰か、助けて、喉が渇いた何か飲みたい水が欲しい

では。朗読すると

同じ文章でも息継ぎの加減で、状態がだいぶ違ってくると思います。

私だけの価値観かもしれませんが、特に語り手が一人称の場合は、句読点の位置を読み込んでキャラクターの人となりを考えています。

私にとってこの作品の読点の扱いは雑に感じました。

キャラクターの人物像を深く想像して楽しむ傾向にある私の読書の仕方では、楽しむことができませんでした。

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