”だが俺は宗教家でもスピリチュアリストでもない。ただ純粋に交霊術の道具とノウハウを持っている”
●あらすじ
「おまじないを誰かに見られたら、五人の中の誰かが死ぬ」
銀鈴学院高校に転校してきた柳瞳佳(ヤナギ トウカ)は霊感体質で
それが原因で心霊事故に遭遇し、以前の学校で退学処分になっていた。
転校初日、大人しめの少女四人組のおまじないの人数あわせによる参加を頼まれ、瞳佳の”人がいい性格”から断り切れずに、心霊事故に巻き込まれてしまう。
五人が鏡に向かって一緒に撮った写真。皆の画面に写っていたのは、真っ黒な長い髪をした六人目の頭だった。
そして少女のうちの一人が忽然と姿を消してしまい……。
心霊案件を金で解決するという同級生・守屋真央に相談することにした瞳佳は、そこで様々な隠された謎を知ることになる──。
鬼才・甲田学人が描く新たなる学園心霊ファンタジー、開幕!
●名(迷)言達
「あたしはそれ、くっだらないと思うけど」by【芙美】
「ぜ、銭ゲバ!」by【瞳佳】
「ていうか真央にいちゃん、いつも女の子連れてくるね」by【由加志】
●みどころ
問題の解決に奔走する主要人物が、”無宗教で霊感がないこと”。
この設定が作品の魅力を引き出していると思います。
超常現象に関して、今まで世界で成されてきた学術的研究の歴史を
霊感のないキャラクターが論理的に語ることで、その信憑性を強く持たせています。
超常現象にまつわる豊富なバックボーンを読み手に提示することで、
読み手が「これはフィクションなのかな?」と安心して読むことができない部分が魅力的です。
●読んでみての感想
ああ…… 怖かった。
学校の怪談系の「ちょっと怖いな」みたいなソフトな導入部から
段々とハードな展開になってきます。
超常現象(オカルト)ものは、
「フィクション」とタカを括って読み進める読者に
如何にして「フィクションだと思わせなくする」か ……なんと言えば良いのでしょうか
「君の傍にも、さも、ありなん」と思わせることが魅力を引き立てるポイントだと思います。
そのうちの一つが、みどころでお伝えした”超常現象(オカルト)にまつわる学術的研究の歴史”の提示です。
そして、この作品にはもう一つあります。それは、今作品の超常現象が起きた原因として提示される
”女子高生のスクールカーストコミュニティから発生したおまじない”
という設定です。
(「おまじない」って、漢字変換すると「お呪い」になるんですね。どうりで平仮名な訳ですね。)
このスクールカースト要素を盛り込むことで、フィクションと読み手の距離がグッと縮まって、リアリティが強まります。
遠い過去の妖怪が活躍するエピソードよりも一枚の心霊写真の方が恐怖をかきたてるように、
オカルトものは、リアリティを感じればそれだけ恐怖(面白さ)が増すのだと思います。
ああ…… 怖かった。
この作品はオカルトものですが、実際に描こうとしたのは
”女子高生のスクールカーストの恐ろしさ”
ではないかと私は勝手に解釈しています。
この作品に登場するキャラクターは多く、その殆どが高校生ですが
キャラクターが多いのにも関わらず、それぞれの性格による相対的立場(階級?)を丁寧に描いていると思いました。
そして、その立場から生まれる、鬱屈とした感情や、疑念や、恨み辛み…… キリがないので”ストレス”と一括りにしますが
これら、各々が抱えている”ストレス”を
「超常現象にまつわる事件と解決」というツール(経験)を使ってあぶりだす物語
ではないかと、私は思っています。
読み終わった後
”オカルトよりも、生きている人間の方がよっぽど怖い”
という結論に達しました。
オカルトの学術的な史料については澁澤龍彦(ウィキペディア)先生の作品が有名です。
とくに「黒魔術の手帖」は”中二病のバイブル”と呼ばれ(ているんでしょうか?)るほど知的好奇心を満たす作品になっています。
専門的な内容ですが、一般人にも読めないことはない難易度の本です(読んでいて、頭が痛くなった記憶はあります)。
こちらもオススメです。
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