ギルドは本日も平和なり(ナヤカ)レビュー


●あらすじ

スキル『成し遂げる力』を身に宿し異世界に転生した青年、テプト。天賦の才に恵まれた彼はその力を使って冒険者を目指すが、

周りから万能型(能力の打ち止めが早い人)と言われ、諦めてしまう。

同じく万能型だった冒険者ギルドの職員に勧められ、

タウーレン冒険者ギルドの『冒険者管理部』で働き始める彼だったが、そこは冒険者や他部署に嫌われていた!!

彼は信頼を取り戻すため、元冒険者の知識や力を使い、依頼の達成や受付の増設など一人奮闘するのだが……。

ギルド内部で起こる問題を解決する異世界ファンタジー奮闘記、開幕!!


●名(迷)言達

「残業か? 手当なんて出ないぞ?」by【エルド】

「わしはもう……思い残すことはない」
「長生きしてくださいね」by【依頼主の老人とテプト】


●みどころ

世界設定が細かく創られています。
モンスターやスキルといったRPGにありがちな設定を
現実(物理的な)の作業に落とし込む為の紐付け(モンスターの修正や、スキルの法則)
が描かれています。
ストーリーよりもそういった細かい設定を読みたい方にはオススメです。


●読んでみての感想

子供の頃、
欲しいゲームソフトが諸事情で手に入らないとき(お小遣いがなかったり、インターネット販売が普及していなかった時代の田舎に住んでいたなど)
ゲームソフトを買わないで、攻略本だけ購入して読んでいた思い出はありませんか? 私の周りだけでも4人くらいます。
攻略本って読んでいて楽しいですよね。 ストーリーとかいまいちわからないけど

世界設定とか美術とかカッコイイ魔法エフェクトの静止画とか、モンスターの弱点がわかっちゃうの。プレイできないけど。

今回の作品は新シリーズの一作目ということもあって、登場人物の会話や行動の合間に世界設定を説明するシーンが多く組み込まれていました。

読後の感想は、”丸々一冊分攻略本を読んだ気分”、でした。

ストーリーの進展が見られなかったけれど、一番最後のシーンで少しだけ動き出しました。

ストーリーが展開していないように思えたのは、主人公の成長が見られなかった事です。

主人公の性格は、齢16で命を落とした前世から変わりません。

彼曰く

”平凡と言えば聞こえはいいが、言い換えてみれば負け続けた人生”

を悔やみ、異世界では”なにかを成し遂げる力が欲しい”と神に望みました。結果、天賦の才を持って異世界に生を受けました。

しかし本作品の中で描かれているのは、他に類を見ない絶大な力を持った主人公の

”平凡と言えば聞こえはいいが、言い換えてみれば負け続けた人生”

そのものです。

傍からみれば困難な頼みを受けても、主人公は苦もなくやってのけます。

特に窮地に立たされる事もありません。 彼の尺度からみたら間違いなく平凡です。

彼は”万能型”という器用貧乏のレッテルを貼られて、冒険がままならなくたっとき

同じく”万能型”レッテルを貼られたギルド職員のすすめで冒険者ギルドに就職します。

しかし主人公は俗に言う”チート”であり、その力故に覚悟さえあれば選択肢は無数に広がっていたはずです。

主人公の能力から「やりたくはないが、やらざるを得なかった」という状況には立たされないからです。

なぜ希望してもいない所に就職を果たしたのでしょうか?

情報が少なすぎて今の私には、”周りに流された”としか考えが及びません。

主人公の性格が前世のまま一貫しているという部分でリアリティーはありますが

それが作品に魅力を与えているかは、また別の話だと思います。私は正直、魅力を感じません。

 

しかし、この一冊の話が丸々「つまらない」とは思いません。

「シリーズ第一巻としては、掴みが弱かった」

と私は思います。

このエピソードは、二巻以降にあるべきだと思います。

本文中にテプトの語りから、一、二文程度の過去のエピソードが説明されます。

前世では16歳で命を落としたこと。

・異世界で前世の記憶を持ったまま鍛冶屋の両親に育てられたこと。

・13歳までには一通りの武器は扱えるようになったこと。

・16歳で両親の反対を押し切って、冒険者になるために家を出たこと。

上記のエピソードだけでも1巻の半分くらいは埋められそうな気がします。

前世の両親の記憶を持ったままの主人公が、異世界で別の両親に育てられているときに何を想ったのでしょうか。

家を出る時、父は激怒し、母は涙を流して止めました。

これは天賦の才ではどうにもできない、大きな岐路だったと思います。

それでも冒険者の道を選んだテプトには確固たる決意があったはずです。

冒険者になったあと、

・スライムの養殖。

・ドラゴンを退治してその血を飲む。

・A級の魔物と主従契約を結ぶ。

・伝説だけで目撃例がなかった精霊と懇意になる。

・一通りの魔法が使えることに気づく。

と武勇伝をつくる主人公。これらのエピソードをしっかり描くだけでも、一巻分は十分に埋まるでしょう。

「なにかを成し遂げる力が欲しい」

そう願った主人公の夢のサクセスストーリーを描いた後

”万能型”

のレッテルを他者から張られ、のけ者にされて本作品へと繋がったなら、感慨深い気持ちになれたと思います(好みの話と言われればそれまでですが)。

 

この作品で特に気になった所は、世界設定を創りこんでいながら

これらの設定が「主人公の凄さをアピールする」以外に活かされていない事です。

掘り下げればドラマティックな展開に持ってこれるエピソードはたくさんあると思います。

それらを一、二文程度で主人公がさらっと言ってギャグにしてしまうあたりが勿体ない。

凄いエピソードを簡潔な語りで済ませる笑いの取り方は、

前提として読者にその凄さがわかる程度の予備知識がないと笑えない”楽屋オチ”の部類に入ります。

 

世界観の設定は、物語に一定の制約を持たせる代わりに、リアリティや臨場感を発揮させる為にあるべきだと思います。

例えば、ギルド登録時に登録者の血液をつかって作成する2枚のカード。

登録者の個人情報がわかるだけでなく、死亡した際に石に変質してそれを知らせる役割を持っています。

これは場面によっては(大人数の冒険者が死の危機に瀕して、それを助けるエピソードなど)危機感を持たせることができます。

このカードの設定をつくったときに起こる制約は

冒険者の識字率です。

テプトが冒険者の安否を確認する時にカードを見たことから、カードには冒険者の名前が刻まれている事がわかります。

しかし別のシーンではテプトが署名を集めるときに字が書けない冒険者の代筆を行う場面があります。

ギルドの依頼で提示される文字は仲間に読んで貰うとしても、カードに書いてある自分の名前くらいは自身で書けるのではないでしょうか。

冒険者の代筆はテプトが冒険者から信頼を得るシーンで必要な場面でこそありますが、”カード”の設定からその不自然さは拭えません。

細かくたくさんの設定を創るだけでなく、その設定を(制約や見せ場)で何処まで場面に活かしきれるか。

アイディアを掘り下げることでもっともっとこの作品の魅力が増すのかな、と思いました。

天賦の才だけでは乗り越えきれない展開を、今後は期待しています。

 

 

最後に

冒険者が主人公の小説で私が一番好きな作品をご紹介したいと思います。

  GRANDIA(グランディア)

ゲーム原作の小説ですが(ゲームも名作です。オーケストラのサントラに、キャラクターに16方位分の手書きアニメーションを貼り付けることで3D化させた予算と情熱とロマン溢れる作品です)

この作品の少年は冒険者の父に憧れ、冒険の為に冒険をします。

”チート”能力こそもっていませんが、形骸化した冒険者協会との決別や

多くの人との出会いと別れを経て、自身で定めた道を突き進みます。

少年が困難と直面しながら大人になっていく物語です(あとがきでは、「少しだけ子供を引きずったままの”男の子”になる物語」と書いてあったと記憶しています)。

調べてみたら、1999年の作品なので取り扱っている商品は全て中古です。

発売した当時は好きすぎて、母や友人、担任の先生(数学担当)に勧めました。

20年近く経った今でも、好きすぎて帯の見出しまで覚えています。

「溢れ出す好奇心、無鉄砲なまで勇気と、一握りの不安を持って少年は旅に出る」

一応、アマゾンのリンクを張らせて頂きます。勿論中古(1円+送料からあります)なので、帯は掛かっていないと思います。
GRANDIA(グランディア)〈1〉新大陸エレンシア

全三巻ですが薄いのですぐに読めるかと思います。アマゾンのレビューを見ると同胞がたくさんいて、少しうれしくなりました(サントラに至っては12人中11人の方が星5(あと御一方が4)でびっくり)。

もし在庫が切れていたらすいません。私が今買いました。(本が遠くの実家にあるもので・・・)

「溢れ出す好奇心、無鉄砲なまで勇気と、一握りの不安を持って、本が届いたら徹夜する!!」

追伸

中古で届いた商品にはなんと帯がついていました。

「溢れ出す好奇心、無鉄砲なまで勇気と、一握りの不安を持って胸に少年は旅に出る」

が正しいキャッチコピーでした。

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