おにぎりスタッバー(大澤 めぐみ)レビュー


●あらすじ

主人公は中萱梓(通称アズ)は高校一年生
見た目はとても地味だけど、中身もとても地味な女子高生だ。
彼女には援交や売春の噂がたっていた。

援交や売春の事実こそないけれど、毎回違う男と歩いている姿が目撃されている。

……実はもっとやばいことをやっていた。

梓の視点から描かれる、ココよりもちょっとだけ狂った世界。


●名(迷)言達

「基本ベージュ系のわたしの生活も朝のほんの一瞬だけはパステルカラーに青春してるっぽさがある」 by【アズの語り】

「だいたいの物事はグーで殴れば解決するでしょ」by【サワメグ(魔法少女)】

「都合はつくものじゃない。つけるものよ。自分の力でね」 by【松川(おでこ美少女)】


●みどころ

この作品を読むときは一気読みをオススメします
半分ずつ読みでも楽しめるかと思います。
このお話は、主人公梓の一人称視点で進行します。
梓の心境の変化は、1ページあたりのテキスト量で表現しています
詳細は下記の感想欄に後述しますが
一気読みすると、文脈と句読点で読むスピードを誘導させられます。
傍から見ればコミカルな価値観を持った主人公が思い描く、リズミカルな文体がみどころです。


●読んでみての感想

本文1ページ目に段落はありません。 テキストみっちりです。
それでも表現のクドさを全く感じさせないのは、一文ずつ読点(。)を打つ度に想いが進行しているからだと思います。

物語序盤の梓は自分の命も含め、自分が生きる世界に全く興味がありません。
拒んでいるのではなく無関心です。

梓の想い(妄想とか斜に構えた価値観)を止める他者がいない頭の中は、考えてることがあっちこっちにいって、どんどん加速していきます。
しかし物語が進行していくうちに、梓の頭の中(この作品の本文)に他者が入ってきます。
梓は他者の反応を観察するようになります。

この作品は、少し遅い”自我の形成”の物語に思えます。
仰々しい書き方ですが、基本的に梓の考えている事はショーもないことで、梓の廻りの人もショーもない人々ばかりで、クスクス笑えます。

みどころの部分で「読むスピードを誘導させられる」と書きましたが、一気読みをすることで、読文スピードの緩急が体験できます。
序盤の梓は自己完結を行うので文章の回転が速い(変な表現ですね、でもこれが適切な気がします)のですが
最後の方にいくと梓は他者のリアクションを気にするようになります。
すると世界のスピードと同調するというか、時間がゆっくりと進むような感覚を覚えて、読んでいる側も視界が一気に開けたような心持ちになりました。
このリズム感のある文章は純粋に「すごい」と思いました。

もう一つの見所はリアルと本の世界観との”ズレ”の発見です。

梓の性格上、世界設定を講釈する場面など微塵もありません。
最初のうちは読んでいるとなんとなく「現代のお話だな」「ちょこっとだけファンタジーが混ざっているなぁ~」と、察しがつきます。
梓の中に走る膨大な妄想(語り)も「冷めた女子高生だな~」という感想を最初は抱きます。
でも、読み進めているうちにそれらが少しずつ狂っていることがわかってきます。梓の価値観が「ただの女子高生」じゃないことがわかってきます。
梓が決して説明しない世界設定を梓の目を通して探求していく作業も楽しめました。

気になった部分は
強いて言うなら梓の年齢設定…ですかね
スマホいじってる女子高生なのに○ヴァとかセー○ムーンとか美内す○えとか、ガン○ム(ファースト)とか「我が生涯にいっぺんの悔いなし!」とかがたまにポーンと出てくるあたりが・・・これはこれで面白いんですけど。テキストに勢いがあるのでこういう些細なところで私は引っかかってしまいました。

梓視点の物語はこの一冊でおしまいのようですが、梓の友人、サワメグ視点の物語が次回発売されるみたいです。楽しみです。
サワメグの本名は本編で明かされていないのですが、 著者名が大澤 めぐみ先生で・・・これは偶然でしょうか?

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