魔物使いのもふもふ師弟生活(無嶋樹了)レビュー


●あらすじ

シンラ・リュウトは魔物使い。山奥でルリ(獣耳少女)と辺境の森で暮らしている。
ある日、かつての旅仲間セシリア(美女)が訪ねてきて、少女を預かることになった。
アレサと名乗る十代半ばの少女が抱きかかえていたのは【白銀古龍(ヴァイスドラゴン)】・・・希少種の魔物だった。
三人と一匹のスローライフなもふもふ系ファンタジー。


●名(迷)言達

「くる? くるるるぅっ」【コドラン(白銀古龍)】
「大切なのは学ぶこと、そして素直さだ」by【シンラ(魔物使い)】
「……ルリさんは選んだんですね」by【アレサ(シンラの弟子?)】


●みどころ

この世界に登場する魔物は”魔力素”という元素を糧にしているため、人間を食らおうとして襲うことはほとんどありません。
しかし、巨大な体躯や力を持つ種も多く、人間から【害悪】として見なされています。

都市部では特に【害悪】のイメージを持った者が多くいます。
都市部から辺境の地にやって来たアレサが森での生活を通して
”魔物=排除すべきもの”
というイメージを自ら払拭していく部分がみどころです。
スローライフを送るには、隣人とのコミュニケーションが不可欠。森に住まう魔物もまた然り


●読んでみての感想

この作品が醸し出す空気が好きです。

それ故に

中央都市から辺境の村へ魔物退治に来たハイザック(王国貴族)が、気晴らしに村の少女を本気で断罪しようと剣を抜くシーンには違和感しかなかった。

その後はお約束で武力によるシンラの仲裁が入るわけだけど、これがものすごく勿体ないと思いました。

この作品は”無知を知ること”というのが魅力の一つだと思ってます。

「魔物とは憎み、排除すべき存在」
と認知されている世界で、魔物と共存している登場人物達の経験を通し、その偏見を取り払う物語です。

魔物にも魔物なりの心持ちというのがある、ということを各エピソードでかなり丁寧に書いていると思います。
これらのエピソードには「魔物をむやみやたらに排除する必要はない」と思わせるのに十分な説得力があり、納得できます。

だからこそ、偏見を持っている側の立場も丁寧に描いて欲しいなぁ、と思いました。
偏見から憎悪に切り替わるにはそれなりの理由があるはずです。
十数年前にその切っ掛けとなるエピソードはありますが、”無知”だけでは憎悪が長年継続する動機としてすこし弱いと思いました。

さらに偏見サイド(所謂カタキ役)で最初に登場する人物が”外道+小物っぷり”を兼ね備えた王国貴族のハイザックさん。

どう転んでも偏見サイドに共感を持たせないように描いているのがちょっと残念でした。

カタキ役が魅力的であればあるほど、この作品が扱っているテーマは引き立ってくると思います。
新シリーズなので、今後は「魅力的なカタキ役が出てくるといいな~」と期待しています。もふもふシーンも増えるといいな~。
あと、のほほ~んと流れるストーリーの奥底に渦巻いているアレサの過去話がいつ頃明かされるのかも楽しみです。

 

 

この物語を読んでフォレスト・カーター先生の「リトル・トリー」の物語が頭をよぎりました。
山に住むチェロキー族(インディアン)の祖父母に育てられた少年が、祖父と共に山で狩りをしたり密造酒をつくったりで生活をして自然の掟を学ぶ物語です。
鷹やキツネとは顔なじみで名前をつけています、仲良しではありませんが同じ山で共存しています。
作者本人は真逆の二面性を持つ人物(ウィキペディア参照)と認識されていますが、リアル世界での「もふもふ師弟生活」を読んでみたい方にはおすすめです(三匹のワンちゃんが登場します)。・・・もふもふ度は低いかも。

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