置き去り勇者と不死鳥の翼(富永浩史) レビュー


”ああ、飽きるほど、何度でも”

●あらすじ

主人公、ダンは航空機のパイロット。
謎の乱気流に巻き込まれた彼は、自機(宇宙開発用に改造された爆撃機)ごと異世界に迷い込む。
片翼を失い姿勢制御がままならなくなった彼が乱気流を抜けてはじめに出会ったのは、落下するチャイナ服姿の少女だった。

”仙術”(一種の超能力)が発達した異世界。
そこには空がなかった。
数十年前、突如上空に現れた魔星が世界中を雲で覆い尽くしてしまったのだ。
そして時折魔星から放たれる魔石が地上に到達し、【鉱獣】という巨大な怪獣となって地上を襲っていた。
チャイナ服姿の少女ネッタは、仙術のエキスパートであるベヌウと仲間達とともに鉱獣退治の真っ最中。

ダンがこの世界で得た仙術の活躍もあって鉱獣を退治することが出来たけれど、元凶である魔星を砕かぬ限り鉱獣は再び襲ってくる。
かつては仙術で空を飛ぶ事もできた。
しかし魔星の力で空を飛ぶ仙術は封じられていた。

仙術の利便性から機械工学の発達が著しく遅れた異世界。
使える仙術とダンの知識を合わせ、修理した飛行機で魔星に挑む。
空を取り戻すために。


●名(迷)言達

「向こうの刃物は、紙が切れるからって城壁も同じように切れるの?」by【ネッタ(チャイナ服少女)】

「てことは、本物のヒコーキもこの形にしてなげれば飛ぶの?」by【ネッタ(チャイナ服少女)】
「君なら投げられるかもしれないけどやめて」by【ダン】

「つきまとってやる、と言っている」by【バンタム・チェン(刑部)】

「止まるでないっ、お前は飛べ!」by【ベヌウ(導師)】


●みどころ

バトルシーンもさることながら、
やはり一番のみどころは、”機体修理”です。
ダン自身はパイロットなので航空学の基礎知識はあっても、メカニック部分は専門外。
壊れた部品を修理することはできない。
ダンはそこで動力部分を仙術でカバーして飛ばすことを考案するけれど、万能な仙術でも限界がある。
「何が出来て、何が出来ないか」
「出来ないならば、他にどのような方法があるか」
工学と仙術の知識をすりあわせて模索する描写は必見です。


●読んでみての感想

どうして人は空に焦がれるのでしょうか・・・。 私だけですか? 違いますよね☆

星の王子様の著者、サン・テグジュペリ先生は飛行機乗りでした。彼のエッセイ「人間の土地」には、彼の郵便飛行士時代のエピソードが描かれていて、そこには空へのロマンがたっくさん詰まっています。
彼は大戦中の1944年7月31日、愛機ロッキードでの偵察任務中に地中海上空で行方不明になります。

一説では「星の王子様」の王子に会うため、飛行機に乗ったまま王子が立ち寄った惑星を訪ねる旅に出たとか出ないとか・・・。
よもやま話ですが、空へのロマンが目一杯詰まった彼の作品を読んでしまった方々は、そんな一説にも謎の説得力を感じてしまうのではないでしょうか。(ちなみに彼と奥さんの名前が刻まれたブレスレットや搭乗機の残骸は1998年に発見されてます)

主人公のダンの夢はさらにその向こう側、”宇宙飛行士”になることで、その途上に本人の希望と関係なく異世界に転送されてしまうわけですが、空へのロマンは潰えることなく残っています。

だって、パイロットだもの。

「元の世界へ戻りたい」
と思うと同時に、雲で覆われた空しか知らないネッタ達を見て
「彼女達に空を見(魅)せたい」
と強く思ったことが、この異世界の危機を救うモチベーションになったのだと思います。

世界はロマンがあれば救えます!!

これはシリーズの一作品目です。
魔星の力で不自然に作られた雲が全て取り払われたとき、どんな空が広がるのでしょうか?
楽しみですね。

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